考察5 冥王星の氷の墓場2
    ・20年来のファンさんの考察・


 クマやリスなどの恒温動物や、ヘビやカエルなどの変温動物には「冬眠」という、

食物も少なく寒さの厳しい冬期に極度に代謝を低下させた状態で、ほとんど生活行動
を中止した状態になる能力をもつ動物がいる。
 「冬眠」の準備として、体内で大量の脂肪が合成されるか、巣に食物が蓄えられる。
組織の脂肪は不飽和度が高まって融点が下がる。体温は徐々に下がり、外温より
0.5-2.0 度高いだけの変温状態になる。心拍数・呼吸数・代謝量は数十分の一になる。
血糖量も下がるが、Mg イオンは増加する。

 さて、細胞内ではエネルギーを生成する器官として「ミトコンドリア」が存在する。
 「ミトコンドリア」は、幅 0.5 マイクロメートルほどの細胞内小器官であるが、
電子顕微鏡下では内外2枚の膜に包まれ、内膜は内側に向かって突出し、棚状の
「クリステ」を形成する。内膜の内側は「マトリックス」と呼ばれる。
 「マトリックス」では「クエン酸回路」、「内膜」では「電子伝達系」と「酸化的燐
酸化に関する酵素」が組み込まれており、細胞内の原形質基質で「ブドウ糖」をピルビン
酸に分解し、さらに「マトリックス」や「内膜」にて、水や二酸化炭素に分解して、
生命活動に必要なエネルギーを生成するのである。
 さて、話を戻そう。
 「冬眠」とは、体内の代謝を極度に低下させた状態であり、呼吸や心拍も減少した状態である。
 すなわち、体内への「酸素」の取り込みが極端に減少し、エネルギー源である「ブドウ糖」の摂取も
抑制され、ミトコンドリアにおける「クエン酸回路」や「電子伝達系」によるエネルギーの生成も
抑えられるのである。
 食物も少なく寒さの厳しい冬期に、無駄にエネルギーを消費することなく、
体内でエネルギーを蓄えつつ、新しい時代を迎えるまで眠っている状態が「冬眠」なのである。
 以上は「冬眠」という特異能力を有している動物についてである。

 ではヒトならばどうだろうか?
 ご存知のようにヒトには「冬眠」の能力はない。
冬山で遭難すると「凍死」してしまう。まず、「冬眠」状態で発見されることはない。
 以下に「岩波 生物学事典 第4版」から「凍死」の仕組みを引用してみると、

 凍死;体温の低下が原因で生物が死ぬこと。
 1.凍結;生物が細胞内凍結をおこしたり、細胞が凍結がある程度以上進んだときに細胞死がおこり、
  これによる障害が代償不可能な場合。
 2.冷却;生物が 0 度付近またはそれ以下の温度まで冷却されたとき、凍結することなしに死ぬことが多い。
  この原因は物質代謝の変調や、原形質の物理化学的変化などによると考えられている。
  後者の場合は冷却の速度が害の程度に大きな影響を与えると考えられる。
 3.恒温動物の場合には、産熱(熱発生)と熱発散の収支が崩れその体温より10-20度くらい冷却されると、
  代謝に障害が起こり、凍結と関係なく0度より遙かに高い温度でも死に至る場合が多い。
  この場合も凍死と呼ばれ、特に激しい疲労などにより産熱が熱発散に追いつかなくなる場合、
  疲労凍死と言うことがある。
  (岩波 生物学事典 第4版)

 つまり、ヒトの体内もしくは細胞内での凍結が、修復不可能であったり、体内で発生する熱量より、
冷却によって奪われる熱量が多くなると、生命活動に必要なエネルギー量が得られないので、
死に至るのである。
 特に細胞内の「ミトコンドリア」が冷却によって、「電子伝達系」と「酸化的燐酸化に関する酵素」
に障害が起こってしまうと、その細胞はエネルギーが生成できなくなり死に至る。
 また身体を冷却されると体液循環もままならなくなり、血液などによる体内の熱も、
体中に行き渡らなくなる。
 そのため、冷却された細胞が多くなり、各組織の「壊死」、さらには「凍死」となってしまうのである。


 しかし、寒冷による障害が少なく、能率良く適当な低体温状態を得るために、
薬物によって体温調節反応を抑制しながら身体を冷やす方法としての「人工冬眠」を用いることで、
ヒトを冷却することが可能である。
 この方法は「冬眠治療」ともいわれ、全身の代謝を低下させ循環停止の時間を延長させての
術式が必要な心臓や脳の手術の場合などや、手術や外傷のショックの予防、精神科などその他の
領域における種々の疾患の治療に適用される。2・3年ほど前の NHK スペシャルで、
脳死状態の患者を、この方法を用いて改善させたと言う紹介もされている。

 また、細胞機能を回復可能な状態に保ったまま凍らせて保存する「凍結保存」という方法では、
細胞外の凍結をゆっくりにしてやることで細胞内が脱水され、氷晶による細胞内構造の破壊が
抑えられ、超低温に凍結することができる。
 「東京化学同人 生化学事典 第2版」によれば、この方法は精子や卵、発生卵、組織小片あるいは
微小な生物体などにも応用可能であり、「家畜の品種改良」や「精子バンク」などに利用されている。
 グリセロールまたはジメチルスルホキシドを凍結保護剤として保存液に加え、毎分1度程度の速度で
ゆっくり凍結し、-196度の液体窒素温度で保存が可能である。
保存温度から取り出したのち毎分200度程度で急速融解し、保護剤を取り除いたのち培養に移す方法
が標準的である。
多くの動物に適用でき、しかも生存期間は半永久的である。以前、液体窒素に浸けた金魚を、即座に水に
戻して蘇生した実験もおこなわれている(この金魚は少ししたら死んでしまったそうだが)。

 これらの方法を用いれば、ヒトも冷却状態で保存できるのではないだろうか。
 ヒトの体内を循環する体液を、凍結保護剤を加えた生理的食塩水などに置換し、細胞の凍結による破壊を防ぎ、
かつ体内の代謝を停止するのではなく、失活直前までに抑制するシステムが確立されれば、
ヒトの凍結保存も夢ではない。
「冥王星の氷の墓場」も、上記のような方法が確立できれば、氷の中での保存も可能であろう。

 しかし、「凍結」に際しては、種々の障害が発生し、死滅する細胞も多い。
また「凍結保存」精子や卵、発生卵、組織小片あるいは微小な生物体などには可能であるが、
ヒトのような複雑な構成をしている生物体では成功していない。
 最後に、「冥王星の氷の墓場」に保存してあった生身の体にもどった機械化人が存在し、
その体は、生きるのに必要な機能がどこも破損されずに保存されていたことについては、
「銀河鉄道999」の世界では、前述の方法が確立されていたからであろう。
そうであれば、地球星人も他の惑星人も関係なく、「冥王星の氷の墓場」に元の身体が、
壊れることなく保存できるだろう。
 しかし、宇宙は広い。
地球星人のような生命体がいるのだから、広大な宇宙には似たような生命体や、
もっと地球星人とは異なる生命体がいてもおかしくはない。
 生まれた星によって、体を低温保存できる生命体がいてもおかしくはないし、
エネルギー生成のシステムが「ミトコンドリア」類似システムを持つ生命体や、
全く異なったエネルギー生成システムを持つ生命体がいてもおかしくはない。
 以前、「ウルトラマン研究序説」と言う名著の中で、
「ウルトラマンが地球の重力に負けずに、あの50メートルの巨体を支えることができるのは、
 ウルトラマンの骨格が地球星人のように「カルシウム」や「鉄」、「マグネシウム」などの
 既知の金属を含むのではなく、未知の金属が含まれるためであろう」
と報告されていたが、まさしくそのようなことがエネルギー生成システムにも当てはまるのではないだろうか。
 「冥王星の氷の墓場」の考察から若干、逸脱してしまったがお許し願いたい。


<参考資料>

・冬眠
動物が食物も少なく寒さの厳しい冬期に極度に代謝の低下した状態で、
ほとんど生活行動を中止した状態でいること。また、そのような状態で越冬すること。
冬眠の準備として、体内で大量の脂肪が合成されるか、巣に食物が蓄えられる。
組織の脂肪は不飽和度が高まって融点が下がる。体温は徐々に下がり、外温より
0.5-2.0 度高いだけの変温状態になる。心拍数・呼吸数・代謝量は数十分の一になる。
血糖量も下がるが、Mg イオンは増加する。
冬眠動物は非冬眠動物より、冬眠期の動物は非冬眠期の動物に比べて組織の寒冷抵抗性が大きく、
特に細胞膜の機能は極端な低温においても正常に保たれる。
冬眠中も体温調節機能が全く失われたのではなく、体温がある限度以下になると
調節作用が働き始める。
冬眠に入る場合の体温の低下に比べて、目覚めるときの体温の上昇は早い。
交感神経系の指令の下、頸部や肩胛部にある褐色脂肪組織が活性化して多量の熱を発生する。
この熱は血流によって、身体の各部に伝えられる。
リスの一種では冬眠現象に特異的なタンパク質の存在が報告されている。
(岩波 生物学事典 第4版、生物教育用語集 日本動物学会・日本植物学会[編])

・人工冬眠
人工的に引き起こされた恒温動物の低体温状態。
動物を低温にさらした場合、放熱が産熱の限界を超すと体温が低下し、
ついに死(凍死)に至る。
しかし、寒冷による障害が少なく、能率良く適当な低体温状態を得るために、
薬物によって体温調節反応を抑制しながら身体を冷やす方法をとる。
体外循環によって血液を冷やす方法は H. Laborit (1951 仏) が開発して、
臨床面に応用した。
フェノチアジン系の自律神経遮断剤を投与したのち、身体を冷水や氷嚢で冷やして直腸温を
30 度前後まで下げる。これは、全身の代謝を低下させ循環停止の時間を延長させての
術式が必要な心臓や脳の手術の場合などや、手術や外傷のショックの予防、精神科などその他の
領域における種々の疾患の治療(冬眠治療 hibernation therapy)に適用される。
非冬眠性の動物を、冬眠動物のような極端な低体温状態に一定期間おいてから蘇生させよう
とする試みはまだほとんど成功していない。
(岩波 生物学事典 第4版)

・凍死
体温の低下が原因で生物が死ぬこと。
1.凍結;生物が細胞内凍結をおこしたり、細胞が凍結がある程度以上進んだときに細胞死がおこり、
 これによる障害が代償不可能な場合。
2.冷却;生物が 0 度付近またはそれ以下の温度まで冷却されたとき、凍結することなしに死ぬことが多い。
 この原因は物質代謝の変調や、原形質の物理化学的変化などによると考えられている。
 後者の場合は冷却の速度が害の程度に大きな影響を与えると考えられる。
3.恒温動物の場合には、産熱(熱発生)と熱発散の収支が崩れその体温より10-20度くらい冷却されると、
 代謝に障害が起こり、凍結と関係なく0度より遙かに高い温度でも死に至る場合が多い。
 この場合も凍死と呼ばれ、特に激しい疲労などにより産熱が熱発散に追いつかなくなる場合、
 疲労凍死と言うことがある。
(岩波 生物学事典 第4版)

・凍結保存
細胞機能を回復可能な状態に保ったまま凍らせて保存すること。
細胞外に氷晶を緩やかに成長させることにより、細胞内を脱水させて、氷晶による細胞内構造の破壊を少なくして超低温に凍結する。
グリセロールまたはジメチルスルホキシドを凍結保護剤として保存液に加え、毎分1度程度の速度でゆっくり凍結し、
-196度の液体窒素温度に保存したのち毎分200度程度で急速融解し、保護剤を取り除いたのち培養に移す方法が標準的である。
多くの動物に適用でき、しかも生存期間は半永久的である。
しかし凍結に際しての種々の障害により多少死滅する細胞もある。
凍結保存の原理は精子や卵、発生卵、組織小片あるいは微小な生物体などにも応用可能である。
(東京化学同人 生化学事典 第2版)
他にも「ウルトラマン研究序説」からも引用しております


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